物語紹介
秋野かえでさんの優しい語り口で朗読された物語。
小説と散文詩の間のあなたに語りかけるようなお話しをお楽しみください。
物語抜粋 -sample-
私はね。
ハッピーエンドが好きだ。
だからこのお話は必ず。
たとえ共に長い道を歩くことになっても。
必ずハッピーエンドにしたい。
ちょっと険しいが一緒に登ってはくれないだろうか。
だから。勝手にだけれど。
あなたを。君を信用して。お話しをしたい。
大丈夫。勝手に信じたくせに勝手に裏切られたとか。
私は思わないから。
お話しをさせてください。
例えば。
教会に行って、罪を告白しただけで許されるのなら。
私は死ぬまでそこで暮らそう。
許されたいという望みはきっと。
必要な感情なんだと思う。
だから無駄にはしないために
私は許される事よりも心の中で悩み続ける事にした。
そうして、自分じゃない誰かがいてくれたら。
それを話してみよう。
恐らく。
多分。
傲慢も貪欲も淫蕩も悲嘆も憤怒も怠惰も虚栄心も。
いつかはきっと。
許されないのだけれど、感覚は薄れていくだろう。
私はね。それを救いだというにはとても惜しい気がしてならない。
私はどんな感覚も大事に大切にしたい。
それは自分だけに与えられた
あるいは自分だけが感じる事ができる。
難しい比喩が許されるのなら。対話の彼岸だからだ。
そこでは善悪では語ることのできない。
救いではないのだけれど。
徹底的で無慈悲でもあるのだけれど。
人だから感じることができる創造上での平穏がある。
信仰は悪いものではないと思う。
けれど世の中にはたくさんありすぎて。
わかっていた事だけれど。わからない事が続く。
今なお続いている。
それは。
――ああ。きっと。
とてもじゃないが私には解けないと思った。
とてもじゃないけれど、自分じゃ無理だと思った。
世の中には理不尽がある。
今。私が起こすものなら。すぐに謝ろう。
だって私はできる事であるならば。
人に優しい人間になりたいからだ。
私は人を傷つけない人になりたい。