お互いを深く想い合う母と子の行き着く先は―――
前田武尊(まえだたける)は母子家庭で育った学生だ。
武尊の母である加奈(かな)は早くに夫と別れ、それ以降、一人で武尊を育ててきた。
加奈は自分の全ての時間を武尊に注いできた。
武尊もそのことはよく分かっている。そういう年齢になった。
武尊はこれまで加奈にそうしてもらったように、恩返しのように、加奈に尽くした。
友との付き合いは最小限にし、加奈が働きに出る平日には真っすぐに家に帰り、夕餉の支度をすませ、風呂を沸かして加奈の帰りを待った。
出来た息子である。
そんな息子を、母である加奈が可愛く思わないはずがない。
加奈は武尊を溺愛していた。
武尊もまた、もしかしたら加奈以上に、母を想っていた。
そんな二人だからか―――少しだけ、二人には普通の母子には無い関係性がある。
「武尊、今日もお願いできるかしら……」
そうやって、息子をベッドに誘う加奈。
「勿論だよ、母さん……」
誘いを断るはずもなく、武尊は母の待つベッドへ上がった。