ここにきて、岩●鈴芽は大変な事に気がついた。
所持金がない。逃げたダイジンを追うため、
何としても神戸まで行かなければならないのに。
財布は空、スマホは充電切れ、ICは残額ゼロ──
辺りは既に暗く、近くに民家らしきものは見当たらない。
歩き疲れて体力は限界ギリギリだし、空腹で頭も回らない。
もしかして、自分はここで野垂れ死ぬんだろうか──
そんな考えが頭をよぎった時、目の前で人影のような
ものが通り過ぎていった。
「あ、あの!すみません──!」
今の鈴芽にとってはまさに救いの神。もう、この人に
助けを求めるしかない。
「───そりゃ、すずめちゃんみたいな可愛い子の頼みなら
聞いてあげてもいいけど」
「ほ、本当ですか!?」
「うん。でも、見返りは当然期待していいんだよね?」
「……見返り?」
「俺がすずめちゃんの旅費を立て替える代わりに、
すずめちゃんがこっちの面倒をみてくれるって事」
男は下品に笑い、己の股間を指さす。
「……!!し、失礼します!!」
「いいのかい?この辺は民家もないし、夜は『出る』ぞお」
「出るって……まさか、く、熊……!?」
「さあねえ。どっちにしろすずめちゃんを助けられるのは、
もう俺だけだと思うけど」
相手の足元を見た卑劣な交換条件。
だが、疲労と空腹で冷静な判断が下せなくなっている鈴芽は、
言葉巧みに誘導され、とうとう相手の条件を呑んでしまう。
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