伸び悩んでいたアスリート少女が、友人に唆されて受けたナノマシンによる人体改造で生体ロボット化して人生観が変わった話。
文字数は約16,000文字。
「それでは、ご確認を」
奏美がスイッチをいれると、芹奈の視界がホワイト・アウトし、次の瞬間には無機質な線で構成されたヴァーチャル空間にいた。
光る線でできた走路が、仮想現実空間の地平の彼方まで、無限に続いている。
「どうですか?」
「はい、とても快適です。もう18’9″7も全力疾走を続けているのに、息も上がらないし疲労も感じません。タイムも、100mあたり6″4も縮んでいます」
ストップウォッチなどで測らなくても、生体コンピュータとなった脳が瞬時に正確なデータを伝えてくる。
「やあ、お疲れさま。……別に、疲れてはいないかな?」
「はい、大丈夫です。先生のくださったこの体のおかげで、とても快適です」
「こちらも良いデータが取れたよ。せっかく速くなったんだ。ヴァーチャルだけでなく実際にも走ってみたいなら、用意をするが」
芹奈は迷うことなく首を横に振って答える。
「いえ、興味ありません。ヴァーチャル空間でのデータは正確なシミュレーションで、現実と全く同じですから。わざわざ試さなくても、早くなったとわかっていればそれで十分だと思います」
男はにやりと笑った。
「なるほど。思うに、君としては実際に走る暇があったら、もっと他にしたいことがあるのだろう」
「はい、その通りです」
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